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ポジティブ連鎖とインクルーシブデザイン

インクルーシブデザイン(Inclusive Design)とは、従来のデザインから排除されがちだった人々(障がい者、高齢者、外国人など)を初期段階から積極的に巻き込み、誰もが利用しやすい製品やサービスを共に作り上げる考え方です。

また、ポジティブ連鎖とは、インクルーシブデザインのプロセスにおいて、少数者の「つらい・生きづらい・不便」という極端なニーズの解決から生まれた製品やサービスが、結果として誰もが使いやすいものとして広く普及し、社会に良い影響をもたらす好循環のことです(図1)。


図1の通り、課題を持つ人をより広く捉え、デザインの恩恵が特定の人々だけに留まらないという考えを強調するため、「障がい者」「健常者」ではなく、「少数者」「多数者」という表現を用いることが適切だと考えます(図2)。


🗣️ 言語化力と生成AIの役割

言語化力とは何か?

言語化力」とは、頭の中にあるモヤモヤとした考えや気持ちを、言葉として明確に表現し、外に出す力のことです。私たちは、仕事の会議での提案、学校の授業での発表、SNSでの情報発信など、「言葉」がなければ社会で前に進みにくい時代に生きています。そのため、「自分の考えを明確に言語化できる人」が有利になりやすい仕組みになっているのが現状です。

言葉の壁と「生きづらさ」

一方で、この「言語化力」が求められる社会は、すべての人にとって公平ではありません。失語症や高次脳機能障害、発達障がいなど、「言葉にすること」や「言葉を理解すること」に困難を抱える人々にとっては、非常に生きづらい時代です。

本当は豊かな考えや貴重な経験があるにもかかわらず、それをうまく言葉にできないだけで、「何も考えていない」「理解が足りていない」と誤解されてしまうことがあります。特に長い文章や複雑な説明を理解することが難しいため、言語化の困難が、その人のポテンシャルを隠してしまう「壁」となってしまうのです。

生成AIが生み出す新しい道

しかし、生成AIという新しい道具の登場によって、この状況は変わりつつあります。

  • 表現の支援: うまく話せなくても、キーワードや短い文章(主語と述語が明確な文など)を入力すれば、AIが意図を汲んで文章にまとめてくれる。
  • 思考の洗練: 自分の頭の中の漠然としたイメージを、AIに手伝ってもらいながら、より洗練された形で「言語化」できる。
  • 理解の補助: 長い文章や複雑な内容の場合でも、AIに要約させたり、主語・述語を明確にした短い文に分解させたりすることで、理解を助けることができる。

図3に示すように、A(一般的な文章)は理解できても、B(障がい者にとって困難な文章)では理解が難しいことがあります。そこで、生成AIが文章を修正し、短い文にしたり、内容を分解したりすることで、理解できることが多くなると考えられます。

図4に示すように、取扱説明書のようなA(一般的な文章)であっても、すぐには理解できないことがあります。生成AIで文章を修正し、短い文に分解し、さらに画像やイラストを追加することで、理解しやすくなる場面が多いと考えています。

A(一般的な文章)を入力し、下記の変換器(=パソコンやスマートフォンなどのデバイス)で変換して、B(障がい者にとって理解しやすい文章)として出力します。

言いかえると、生成AIは、言葉のハンディをもつ人にとっての「外付けの言語化装置」になりうるのではないでしょうか。これは、従来の技術では難しかった、「思考」と「表現」の間のギャップを埋める大きな可能性を秘めています。AIが、個人が持つ内なる考えや知識を、社会で通用する「言葉」の形に変換する橋渡し役となってくれるのです。


💡 インクルーシブな社会への提言

言語化力が重視される現代だからこそ、私たちは立ち止まって考える必要があります。人間だけに言語化の重責を背負わせるのではなく、これからは「人+AI」で言葉をつくるしくみを整えることが大切です。

生成AIの活用は、単なる効率化ツールに留まりません。それは、誰もが自分の考えを表現し、社会に参加できる機会を広げるための、インクルーシブな社会を築くために不可欠な一歩だと感じています。


🌍 導入状況と春日部市への提案

生成AIを導入している企業の割合は、日本では「2割未満」であるのに対し、米国やオーストラリアでは「約7割」とする調査もあります。
この世界の流れを踏まえると、春日部市においても、誰もが情報を発信し、アクセスできるようにするため、積極的に生成AIの導入を検討すべきだと考えます。