「入る会社、間違えた。もう辞めたい」
4月、新卒社員が働きはじめて間もないこの時期、SNSや掲示板ではこうした声が次々と上がっています。
実際、退職代行サービスへの新卒者からの依頼件数がたった3日で31人にものぼったというデータも。これは去年の約2倍にあたります。
なぜ、入社してすぐに辞めてしまうのか?
最も多く聞かれる理由は、「話が違った」というものです。
求人票や面接では「基本給16万円+手当」と説明されたのに、実際の給与明細を見たら手当が少なく、生活が不安に。
さらに、「土日休み」と聞いていたのに、入社後すぐに休日出勤が求められるようになった。
ある新卒社員は「嘘をつかれたと感じた。社会人デビューでこれでは、もうその会社の人と顔を合わせたくない」と話しています。
こうした“ミスマッチ”が起こる背景には、企業側の過剰なアピールもあります。
人手不足が深刻な中、少しでも多くの人材を確保しようと「よく見せすぎる」求人が増えているのです。
問題は会社だけではない
もちろん、すべての責任が会社側にあるわけではありません。
ある退職代行サービスの分析によれば、
- 2割は明らかに会社側(いわゆるブラック企業)に非があるケース
- 6割は企業と新卒側の「すれ違い」
- そして残り2割は、新卒側に問題があったケースだといいます。
すれ違いの多くは、「言葉足らず」「説明の誤解」「期待と現実のギャップ」など、コミュニケーション不足から来ています。
例えばこんなエピソードもありました:
「上司の指示でやった仕事が、さらに上の上司に怒られた。事情を説明しても“その上司のせいにするの?”と言われ、正直に話すことの難しさを学んだ」
社会に出ると、こうした理不尽に思える経験も少なくありません。
でも、これは成長するための学びでもあります。
「すぐ辞める」ことは悪いことなのか?
これについては世代によって意見が分かれます。
- 「今は辞めてもいい時代。早く見切りをつけて次へ行くのも一つの判断」(30代)
- 「30年前と比べれば今の職場環境はだいぶ楽。辞めるのはもったいない」(60代)
どちらが正しいというよりも、時代背景や個人の価値観に左右される問題です。
ただ一つ言えるのは、「逃げること」と「見極めること」は違うということ。
では、どうすれば早期離職を防げるのか?
企業側にできることは、「正しい情報を出す」ことです。
都合の良いところだけ見せるのではなく、実際の仕事内容・働き方・給与体系をありのまま伝える姿勢が求められます。
そして、新卒者(求職者)側にできることは、
- 「数日間で会社を判断しない」
- 「違う角度から情報を集めてみる(社員インタビュー、OB訪問、口コミなど)」
- 「配属先や職種に違和感があっても、少し経験してから判断する」
ことです。
たとえば、石油ストーブの会社に就職した人が「普通の事務と思ったら、設計やトレース(図面写し)をやらされた」というケースもありました。
ですが、それをきっかけに新しいスキルを得たかもしれません。
終わりに:「辞めたい」は成長のチャンスでもある
社会に出て、「辞めたい」と思うことは誰にでもあります。
でもその気持ちは、「違和感に気づいた」という大切なセンサー。
そのセンサーを無視せず、「何が嫌だったのか?」「自分は何を大切にしたいのか?」と自分に問い直すことが、次の一歩を踏み出すヒントになります。
「辞めたい」その先に、あなたに合った未来が待っているかもしれません。
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