ある日突然、言葉が出てこなくなったらどうしますか?
大切な人の名前すら言えなくなったら…。
これは、誰にでも起こり得る「失語症(しつごしょう)」という状態のお話です。言葉の障がいと聞くと、生まれつきのものと思われがちですが、実は多くは脳卒中や事故によって突然やってきます。日本には約50万人の失語症の方がいるとされています。
◆ 倉谷さんの物語:歌がことばをつないだ
埼玉県に住む65歳の倉谷さんは、5年前に会議中に突然倒れました。脳の中で出血が起こり、ブローカ失語と診断されました。テレビの内容は理解できても、看護師に名前を聞かれても答えられない。見た目は普通なのに、言葉だけがうまく出てこない…。これは、周囲の人にもなかなか理解されにくい苦しみです。
そんなとき、看護師が言いました。
「歌うと、言葉が出やすくなることもありますよ。」
この言葉がきっかけで、倉谷さんは「歌うリハビリ」を思いつきます。
紙に歌詞を書いて、歌って、録音して聴いて、また歌って…。
努力は続き、ついに自分の名前が歌えるようになったのです。
◆ 歌うと話せるようになるのはなぜ?
言葉は左脳、音楽は右脳が担当しています。失語症では左脳が傷つきますが、「歌う」ことで右脳の力を借りて、言葉を再び使えるようになることがあるのです。これを活用したリハビリ方法が**MIT(メロディック・イントネーション・セラピー)**です。
MITでは、リズムに合わせて手を動かしながら、歌のように言葉を練習します。歌うように話すことで、脳の別の部分が言葉を補ってくれるのです。
◆ 特許の視点:新しい言葉支援デバイスの提案
倉谷さんのような方々の体験を活かして、新しい**発明(特許)**が考えられます。
📌【発明の名称】
「音楽インタラクション型言語再生支援システム」
📌【概要】
スマートフォンやタブレットを利用し、以下のような機能を備えたシステムです。
- ユーザーの声を録音し、自動で音程・リズム・発音を分析
- 正しい発音との比較結果を、視覚(色やグラフ)と音でフィードバック
- 個人の発話困難音(例:カ行・ラ行)を特定し、繰り返しトレーニング
- 歌詞やフレーズを使った練習モードと、日常会話モードの切替機能
- 練習の履歴を記録し、SNS共有・応援機能つき(例:「いいね!」)
📌【効果】
- 自分のペースで楽しくリハビリが可能
- 音楽の力で脳の別の部分を活性化
- モチベーションの維持(録音・SNS応援)
- AIによる発話補助が可能になる未来への第一歩
◆ 高校生へのメッセージ:言葉って、思ったよりも“すごい”
普段当たり前のように使っている「言葉」。実はそれを話すには、脳のいろいろな部分が同時に動いているんです。失語症になると、それが止まってしまう。でも、「あきらめない心」と「音楽の力」で、また話せるようになることがある。これって、まるで脳の中にもう一度“道”をつくっているようなものなんです。
そして、こうした経験が新しい**技術(テクノロジー)や発明(特許)**につながっていきます。いつか、あなたのアイデアが、誰かの「話したい」を助けるかもしれません。
◆ まとめ
- 失語症は誰にでも起こる可能性がある
- 歌うことは言葉のリハビリに効果がある場合がある
- 技術と音楽の組み合わせで、新しい支援のかたちが見えてきた
- 新しい支援機器は、特許として保護されることで広く普及できる
「話すこと」って当たり前じゃない。
でも、「伝える力」は、失っても取り戻せるんだ。
そして、それを助ける発明や技術は、私たち自身の中にある。
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