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新たなスパイ防止法は「人権を守る設計」が大前提

政府は「スパイ行為への対策」を強化するため、関連法制の検討を進める方針だと報じられています。周辺の安全保障環境が厳しさを増す中で、防諜(ぼうちょう)体制の整備が必要だという問題意識は理解できます。

しかし同時に、法律の作り方を誤れば、表現の自由・報道の自由、そして内部告発者(公益通報者)の保護が弱まり、社会全体が萎縮する危険があります。ここが最大の論点です。


目次

1985年の教訓:「秘密」が広すぎると、民主主義が傷つく

過去に自民党は1985年、「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」を提出しました。ところが、当時この法案は

  • 「国家秘密」の範囲が広範囲・無限定になり得る
  • 処罰が重く、最高刑に死刑を含む
    などの点が強く批判され、廃案になりました。

この出来事が示すのは単純です。
“国を守る”という目的が正しくても、対象が広すぎる法律は、言論と社会を弱らせる――ということです。


既にある法律との関係を、あいまいにしない

2013年に成立した特定秘密保護法は、防衛・外交など一定の分野で、政府が「特定秘密」を指定し、漏えいに罰則を設ける枠組みを作りました。さらに近年は、経済安保の枠組みも整備されつつあります。

それでも「未然防止や処罰が不十分だ」として新法を求める声がある一方で、慎重論はこう問いかけます。
“すでに可能なこと”と、“新法で増える権限”は何が違うのか。
この整理を曖昧なまま進めるほど、国民の不信は大きくなります。


国際基準の“超えてはいけない線”

仮に新たなスパイ防止法を制定するなら、国際人権法(ICCPR等)に沿った歯止めが必須です。とりわけ重要なのが、表現の自由を制約する際の原則として示される、次の考え方です。

「正当な目的のために必要であり、広範囲すぎてはならない」

つまり、

  • 目的は正当(安全保障など)であること
  • しかし制限は必要最小限であること
  • そして対象・解釈が広すぎないこと
    この3点が揃わない法律は、運用次第で“言論統制”に近づきます。

守るべき人を、法律に“明記”する

新法が本当に「国を守るため」なら、国民の権利を守る仕組みも同時に作るべきです。特に、公共の利益のために情報を扱う人たち――
内部告発者、ジャーナリスト、研究者、活動家、独立監視団体など――を、曖昧な運用で巻き込まないための条文上の保護が必要です。

「取材や研究が犯罪と紙一重になる」社会では、国の力はむしろ弱くなります。


これだけは外せない“設計条件”チェックリスト

最低限の条件を短くまとめます。

  • 定義を狭く具体的に(「秘密」「スパイ行為」を広く取らない)
  • 独立した監督(第三者チェック、手続の透明性)
  • 公益目的の情報収集・報道・研究の保護(明文化)
  • 罰則は比例原則(重罰で社会を萎縮させない)
  • 既存法との違いの説明責任(新法が必要な理由を具体化)

まとめ:安全保障か人権か、ではない。「両立の設計」が本題

スパイ対策の必要性が高まるほど、法律は“強く”なりがちです。だからこそ、最初から 人権を守る設計 を入れないと、後から運用で取り戻すのは難しい。

議論の焦点は、単なる賛否ではなく――
「正当な目的のために必要であり、広範囲すぎてはならない」
この原則を満たす形で、制度を組み立てられるかどうかです。

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