――“資源”ではなく“命の材料”が止まるとき
「中国の輸出規制」と聞くと、多くの人はまずレアアースを思い浮かべます。
スマホ、EV、半導体――確かに重要です。

(海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年1月から、南鳥島沖でレアアース(希土類)泥を回収する試験採掘を実施する。)
でも、私が本当に怖いと思うのは、そこではありません。
**抗生物質(抗菌薬)**です。
なぜなら、レアアースが止まると「産業が苦しくなる」。
しかし抗生物質が止まると、医療が止まり、命が危うくなるからです。

抗生物質は「完成品」より手前が弱点
抗生物質は、最後に日本で仕上げられているものもあります。
ここだけ聞くと「国産できるなら大丈夫」と思ってしまいます。

でも問題は、**その“手前”**です。
抗生物質づくりには、発酵などで作られる重要な材料(中間体)が必要になります。
この中間体がないと、工場があってもラインが動いても、完成品は作れません。
つまり――
製造の“心臓部”が海外依存になっている可能性がある、ということです。
「セファゾリンショック」が示した現実
過去に、抗生物質が足りなくなったことで現場が揺れた例がありました。
ある薬で供給が止まり、代替がすぐに用意できず、医療現場は大きく影響を受けました。
このとき起きたのは、単なる「薬がない」ではありません。
- 手術が延期される
- 代わりに“より広く効く強い薬”を使わざるをえない
- その結果、**耐性菌(薬が効かない菌)**が増えるリスクが上がる
抗生物質は「強ければ良い」ではなく、
必要最小限で適切に使わないと、未来の医療を削ってしまう薬です。
たとえるなら「エンジンは作れるが、ネジがない」
状況を分かりやすく言うと、こうです。
自動車工場があって、エンジンのラインもある。
でもエンジンの心臓部に必要な「特殊なネジ」を海外から買っている。
そのネジが止まれば、工場は止まる。
これが医療で起きると、影響は産業よりずっと重い。
**“生活が不便になる”ではなく、“治療ができない”**に直結します。
なぜ「レアアースより危ない」と言えるのか
レアアースが止まると、経済は傷つきます。
でも時間をかけて代替や調達先変更が進む可能性があります。
一方、抗生物質は違います。
- 感染症
- 手術
- 外傷
- 免疫が弱い人の治療
こうした場面で、抗生物質は今この瞬間に必要です。
不足が起きれば、影響はすぐに現れます。
つまり抗生物質は、
「国家の安全保障」だけでなく「国民の医療保障」そのものなのです。
私たちが今、考えるべきこと
不安を煽りたいわけではありません。
ただ、「見えにくい弱点」を放置したまま楽観するのが一番危ないと思います。
現実的に必要なのは、次のような準備です。
1) 重要原料の供給源を分散する(脱・一国依存)
“止められない形”にする。これが基本です。
2) 国内生産は「最後の仕上げ」だけで満足しない
中間体まで含めて、どこまで自前化できているかが重要です。
3) 医療用の戦略備蓄(ストック)を整える
不足が起きたときの時間を稼ぐ仕組みが必要です。
4) 抗生物質を大切に使う(耐性菌を増やさない)
不足の時代に入るほど、抗生物質の価値は上がります。
「効く薬」を未来に残す行動も、社会の防衛になります。
まとめ:レアアースより“命の材料”が怖い
レアアースは産業を支える。
抗生物質は命を支える。
だから私は、こう言いたい。
レアアースよりも、抗生物質のほうがずっと危ない。
そしてこの問題は、遠い外交の話ではなく、
「ある日突然、薬局で“欠品です”と言われる」かもしれない、生活の話です。
医療を守ることは、安心を守ること。
今こそ、“見えない弱点”に光を当てるべきだと思います。






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