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「死ぬ瞬間、何が見えるのか?」──てんかんと臨死脳波から考える意識の謎

目次

◆要約

本記事では、「てんかんによる意識喪失の体験」と「臨死時の脳波研究」を通じて、人が死の間際に何を感じ、考えているのかを探求します。2022年に発表された中国・エストニアの研究によれば、心停止直前にもガンマ波などの高次脳活動が観測され、いわゆる「走馬灯体験」の脳内メカニズムを示唆しています。一方、筆者の実体験では、てんかん発作によって左脳・右脳の機能が停止したと思われる状態で完全に意識がなく、「走馬灯」は経験していません。このような主観的体験と科学的知見を重ねることで、「意識とは何か」「死とはどこから始まるのか」という根源的問いに迫ります。


◆はじめに:てんかんと意識喪失という現実

私はある日、突然てんかんを発症しました。発作の前兆は明確ではなく、ただ「掃除機をどう使えばいいのか分からない」という、日常的にはありえない“失行”に戸惑ったのを覚えています。

妻に「一階に戻って」と言われた瞬間、意識は完全に途絶え、そのまま3日間、記憶がありません。意識が戻ってきたときには、すでに病院のベッドの上にいて、「ここはどこだ?」という状況でした。

この3日間の記憶喪失を通じて、私は「死ぬこと」について深く考えるようになりました。なぜなら、あの意識の“無”の状態こそ、「死後」に近い感覚なのではないかと感じたからです。


◆「死ぬ瞬間、何が見えるのか?」──脳波研究の驚くべき発見

2022年に発表された論文「Enhanced Interplay of Neuronal Coherence and Coupling in the Dying Human Brain」は、脳出血により心停止に至った87歳男性の臨終直前の脳波を記録・分析した貴重な研究です。

主な観察ポイント:

  • ガンマ波の異常な増加:心停止直前、ガンマ波(30〜150Hz)の活動が急増(2〜5倍)。
  • α波とガンマ波の連携:意識や記憶再生に関与するα波が、ガンマ波を調整する形で活動。
  • 死後も残る相対的活動:心停止後でも、ガンマ波の“相対的割合”は高かった。

これらの観測結果は、いわゆる「走馬灯」のような過去の記憶の再生現象に脳波レベルでの根拠を与えるものです。つまり、「死の瞬間に人生を走馬灯のように思い出す」という体験は、脳の最後の活動として“実際に起きている可能性がある”ということになります。


◆私には「走馬灯」はなかった──意識の個人差と神経回路の多様性

一方で、私のようにてんかんによって意識を完全に喪失した人間には、「走馬灯」はなかったのです。

この違いは何を意味するのでしょうか?

私見としては、以下の理由が考えられます:

  • 脳のダメージが急激・広範囲だったため:私の場合、てんかん発作により左脳・右脳両方の活動が停止した可能性があります。研究対象の男性のように、徐々に活動が低下していくプロセスがなかったため、「回顧する猶予」がなかったのかもしれません。
  • 意識状態と脳波活動は別問題:脳波が活発に動いていても、主観的な「意識」は必ずしも伴わない可能性があります。これは、睡眠時に夢を見ていない“ノンレム睡眠”でも脳波が活動していることと類似しています。
  • 脳内ネットワークの構成差:脳の部位によって、記憶や感情の処理に関与する回路が異なります。例えば、私のようにウェルニッケ野に障害があると、記憶の“言語化”が困難になり、「走馬灯」的な映像記憶が生成されにくい可能性があります。

◆死の脳科学:神経生理学的“最期”の設計図

今回の研究から見えるのは、「死」は単なる“終わり”ではなく、“神経活動のひとつのピーク”でもあるということです。

死の過程における4つの段階(脳波的視点):

  1. てんかん発作の後の異常活動(興奮)
  2. 左脳の活動停止
  3. 両半球の活動抑制(沈静)
  4. 心停止とともに全体活動の低下

この流れの中で、「記憶の再構成」や「自己意識の確認」が行われている可能性があります。

さらに、ガンマ波は「注意」「意識の統合」「記憶の想起」に関与していることが多数報告されています。つまり、死に際してこの波が強くなることは、脳が「最後の仕事」をしている状態と捉えることもできます。


◆「意識の消滅」をどう受け止めるか──てんかん発作からの哲学的帰結

私が経験した意識の喪失は、「無」ともいえるものでした。音も光も感情も記憶もない。まるで電源を落としたコンピューターのような状態です。

このような経験を持つと、「死」は恐怖というよりも、「静かな終わり」として受け入れることもできるようになります。

それでも、「最後に人生を振り返る瞬間があるのでは」という希望は、誰にとっても慰めになるかもしれません。


◆学びと新しい視点

  • てんかん発作による意識喪失体験は、死の脳科学と重なる
  • 死の瞬間には脳が“活性化”する時間がある可能性がある(ガンマ波)。
  • 個々の脳の構造や損傷の状況によって、「走馬灯体験」は起きないこともある
  • 意識とは単なる脳波ではなく、主観的経験の複雑なネットワークによるもの
  • 死を理解するためには、科学だけでなく主観的体験も欠かせない

◆特許アイデア:死の直前脳波による「人生最終記録システム」

タイトル:

「臨死脳波記録装置および記憶再構築支援システム」

背景:

人の死の間際には、記憶の再構成と関連するガンマ波活動が観測される。この活動を記録し、遺族にとって意味ある「最期の記録」とする装置は、医療・福祉・葬送分野での価値がある。

概要:

  • 被験者の臨死脳波(特にガンマ波とα波)を高精度に検出。
  • AIが脳波パターンから関連記憶を推定し、映像や音声として再構築。
  • 最後の数分間の記憶を“家族に伝える”映像として自動編集。

応用分野:

  • 医療(尊厳死の理解)
  • 宗教・哲学(死生観支援)
  • 高齢者介護(臨死体験の共有)

◆おわりに

てんかんを経験した私だからこそ、脳波と意識の関係に対する興味は尽きません。意識の「ある・なし」は決して単純ではなく、死の瞬間でさえ、脳は何かを伝えようと働いているのかもしれません。

「死ぬとき、人は何を思うのか?」

その問いに対する答えは、科学と体験の間にあるのかもしれません。

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