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インクルーシブデザインが生み出す、誰もが取り残されない世界

〜私が障害者となり、弁理士として生み出した6つの特許から〜


はじめに:デザインの力で、境界線を溶かす

ふと「インクルーシブデザイン」という言葉を耳にしたことはありますか?
少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、その本質は、とても温かく、力強いものです。

私なりの解釈で言い換えるならば、
「ある人の『困った』を起点に、当事者と共に解決策を創り上げる。すると、その成果は想像以上に広がり、結果的に多くの人々の生活を豊かにする」
という考え方です。

もっとシンプルに言えば、
「共に創る。だから、誰もが使いやすい。」

この概念は、単なるお題目ではありません。私自身の人生が、この考え方の生きる証となっています。

私の物語:脳梗塞がもたらした転機と気づき

私はかつて、ある日突然、脳梗塞を発症しました。その結果、高次脳機能障害、失語症、てんかん、そしてAPD(聴覚情報処理障害)/LiD(言語理解障害)という障害と向き合うこととなり、身体障害者手帳2級を所持する者です。

障害者となる——それは、今まで当たり前にできていたことが、できなくなる体験の連続です。しかし、それは同時に、社会の中にある「見えにくいバリア」を、肌で感じるようになった瞬間でもありました。

そして、私は弁理士でもあります。

「障害者」と「弁理士」。世間的には一見、相反する二つの肩書を併せ持つことになりました。しかし、この両方の視点を持つからこそ見える世界があります。それは、「技術の力で、感じたバリアを解消できる」ということです。

障害を負ってからも、私は弁理士としての仕事を続け、これまでに6件の新しい特許を生み出してきました。そして、これら全てが、まさに「インクルーシブデザイン」の哲学に根ざしたものなのです。

最新作:誰の耳にも、クリアな音声を届けるスマートイヤホン

ほんの一昨日、2025年10月15日。私はまた一つ、新たなアイデアを特許庁へ提出しました(特願2025-174046)。

これは、私自身が悩まされているAPD(聴覚情報処理障害)に焦点を当てた発明です。騒がしい場所で相手の言葉が聞き取りづらい、複数人の会話の内容が理解しにくい——。そんな困難を抱える方のために開発しました。

この技術は、障害者の耳には届きにくい音声を、スマートイヤホンを通してクリアに聞こえるように処理します。しかし、ここが重要な点です。その成果は障害者だけのものではありません。

例えば、

  • カフェでの重要な商談
  • 満員電車の中での電話
  • 雑音の多い工場現場での指示確認

——こうしたあらゆるシーンで、健常者にも「よりクリアで聞き取りやすい音声」を提供します。特定の人の「困った」を解決する過程で、気がつけば「みんなに役立つ」製品が誕生したのです。

インクルーシブデザインの本質:弱さが強さに変わる瞬間

私がこれまでに提出した6件の特許は、すべてこの同じ思想から生まれています。

インクルーシブデザインは、「障害者のため」の特別なデザインではありません。それは、社会の多様性を認め、そのほんの一部から始めた創造活動が、循環し、社会全体をより良くするという、力強いイノベーションの手法なのです。

「弱さ」や「困難」は、時に新たな価値を生み出す最強の起点になり得ます。なぜなら、それは既存のシステムや製品が抱える「本当の課題」を、赤裸々に映し出す鏡だからです。

おわりに:あなたも、共に創る側に

インクルーシブデザインは、専門家だけのものではありません。
「ここが使いにくいな」
「もっとこうだったらいいのに」
——そんな日常の小さな気づき全てが、社会を変える種になります。

私の物語が、ほんの少しでも、あなたにとっての「何か」のきっかけとなりますように。私たち一人ひとりの視点と気づきが、誰もが生きやすい、豊かな世界を創り上げていくのだと信じて。

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