あなたは毎日、脂身の多い肉(豚バラ肉、霜降り牛、ベーコンなど)、バターや生クリーム、揚げ物、市販のスナック菓子やケーキ類、ソーセージやハムなどの加工肉を食べていませんか?

これらの食品は、LDLコレステロール(いわゆる“悪玉”コレステロール)を高める大きな要因です。しかし、LDLが高くても初期には自覚症状がないため、放置されやすいという問題があります。そしてそのままにしておくと、心筋梗塞、脳梗塞・脳出血、閉塞性動脈硬化症、慢性腎臓病など、命に関わる深刻な疾患へとつながる可能性があります。


「60年データが教える、“本当に危ない食材”とコレステロールとの意外な関係」
コレステロールに悩む人は少なくありません。特に「LDLコレステロール(悪玉)」が高いと、健康診断で指摘される人が非常に多いのが現状です。では、どのような食習慣が問題なのか?何を避けるべきか?
この問いに対し、60年以上にわたり日本人約1万人を追跡した「CIRCS研究」の成果が、貴重なヒントを与えてくれます。
■ CIRCS研究とは:60年超の疫学データが語る健康の真実
「CIRCS(Circulatory Risk in Communities Study)」は、1963年に始まり、日本人の生活習慣と健康状態の因果関係を科学的に明らかにすることを目的とした、日本を代表する疫学研究です。60年以上、約1万人を対象に継続的な追跡調査を行ってきたこの研究は、世界でも例を見ない長期・大規模な信頼性の高い研究です。
「疫学」とは、医学と統計学を組み合わせた学問領域で、個人ではなく集団のデータを解析することで、病気の原因や予防法を明らかにします。
■ LDLコレステロールと食習慣の関係
LDLコレステロールは、本来ホルモンや細胞膜を作るために必要な物質です。しかし、血中に多すぎると血管壁に沈着し、炎症や動脈硬化を引き起こします。これは結果として、心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気のリスクを高めます。
特に日本人は、欧米と比べてLDLが高くなりやすい体質や食習慣の傾向があり、注意が必要です。
■ かつての常識は今の非常識?卵はむしろ健康食材
一昔前は、卵や魚卵がコレステロールの原因とされ、避けるよう指導されていました。しかし、CIRCS研究やその他の最新データでは、1日1個程度の卵でLDLが有意に増えることはなく、むしろ栄養価の高い優良食材であると見直されています。
■ 本当に危ないのは「肉の脂身」
CIRCS研究によれば、LDL値を大きく押し上げる主な原因は「肉の脂身」でした。1980年から2010年にかけて、日本人の平均コレステロール値は約3倍に上昇。その背景には、食の欧米化、特に「脂身の多い肉」の摂取増加があります。
豚バラ肉、霜降りステーキ、ロースかつなどは動物性飽和脂肪酸を多く含み、LDLコレステロールを著しく上昇させます。
「和食→洋食」の変化だけでなく、「赤身→脂身」への嗜好の変化が、日本人のコレステロール問題の根底にあるのです。
■ 学び①:「食の誤解」を今こそ見直すべき
私たちは「卵が悪い」「魚卵はダメ」といった思い込みにとらわれがちですが、最新の疫学研究はこれらを否定しています。
健康の常識は日々進化しています。信頼できる長期的なデータをもとに、自分自身の生活習慣を柔軟に見直す必要があります。
■ 学び②:健康な人は“無意識に”良い選択をしている
CIRCS研究で興味深いのは、「健康な人は意識しなくても健康的な習慣を実践している」点です。
- 脂身の少ない肉を選ぶ
- 野菜中心の食事
- 毎日少しでも体を動かす
- 間食を控えめにする
これらの“さりげない選択”が、結果としてLDLコレステロールの上昇を防いでいるのです。
■ 新しい視点:「疫学×AI」による未来の個別健康アドバイス
このような長期ビッグデータを活用し、AIと組み合わせることで、個人に最適化された健康アドバイスが可能になります。
例えば、日々の食事履歴や遺伝情報、運動量などを分析し、「あなたは豚バラより鶏むね肉が向いています」といった具体的な提案が自動でされるような時代が、すぐそこまで来ています。
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