──16週間の研究から見えた、身近なおやつと記憶力の関係
年齢を重ねると、
- 名前がなかなか出てこない
- さっき聞いたことをすぐ忘れてしまう
- 集中力が続かない
こうした「ちょっとした物忘れ」が気になってきます。
そんな中、「特別なサプリ」でも「高価な機械」でもなく、
ごく普通のスナックを食べ続けただけで、脳の血流が増え、記憶力が良くなった
という研究結果が報告されました。
そのスナックとは――
食塩を使わず、皮つきでローストしたピーナッツ です。ナゾロジー
2025年にオランダ・マーストリヒト大学の研究チームが行った臨床試験で、
16週間、毎日ピーナッツを食べ続けた高齢者の脳の血流と記憶力が有意に改善した
と報告されました。PubMed+1
目次
- 脳の血流が落ちると、なにが起きるのか
- 16週間のピーナッツ実験:どんな研究だった?
- 実際にどれくらい良くなったのか(血流&記憶)
- なぜピーナッツが効くのか?考えられる理由
- 日常生活での取り入れ方と注意点
- 研究の限界と「うまくつき合う」視点
- まとめ:今日からできる、小さな「脳ケア習慣」
1. 脳の血流が落ちると、なにが起きるのか
脳は、体重の**約2%しかないのに、
体が使う酸素の約20%**を消費する、とても「燃費の悪い臓器」です。PsyPost – Psychology News
加齢とともに脳の血管は少しずつ硬くなり、血流が減りやすくなります。
その結果、
- 記憶をつかさどる神経細胞の働きが鈍る
- 情報処理のスピードが落ちる
- 認知症のリスクが高まる
といった影響が出ることが知られています。EurekAlert!+1
研究者たちは長年、
「脳の血流をよい状態に保つ食事」を探してきました。
そこで注目されているのが、血管を広げる「一酸化窒素(NO)」の材料になるアミノ酸や、
抗酸化作用を持つポリフェノールなどを含む食品です。
ピーナッツは、まさにその条件に合う食べ物の一つでした。
2. 16週間のピーナッツ実験:どんな研究だった?
今回の研究は、オランダ・マーストリヒト大学のチームが実施したランダム化・単盲検・クロスオーバー試験です。PubMed+1
対象者
- 年齢:60〜75歳
- 健康な男女 31名
- もともと大きな病気のない高齢者
やったこと
参加者は、次の2つの期間を両方経験します。
- ピーナッツを食べる期間(16週間)
- 無塩の「皮つきローストピーナッツ」を
1日60g(約340kcal) 食べる
- 無塩の「皮つきローストピーナッツ」を
- ピーナッツを食べない期間(16週間)
- 8週間の休み(ウォッシュアウト)をはさんで実施
どちらの期間も、普段の生活はなるべく同じに保ちつつ、
- 脳の血流:MRI(ASL:動脈スピン標識法)で測定
- 記憶力:言葉の記憶テスト(遅延再生など)
- 血圧などの心血管指標
をチェックしました。PubMed+1
3. 実際にどれくらい良くなったのか(血流&記憶)
結果は、研究チームにとっても予想以上だったそうです。ナゾロジー+1
① 脳の血流の変化
ピーナッツを食べた期間には、次のような変化が見られました。PubMed+1
- 脳全体の血流:+3.6%
- 灰白質(神経細胞が多い部分)の血流:+4.5%
- 前頭葉の血流:+6.6%
- 側頭葉の血流:+4.9%
前頭葉や側頭葉は、
- 記憶
- 言語
- 注意力
などに深く関わる領域です。
つまり、「脳の働きの中枢部位」で血流がしっかり増えていた、ということです。EurekAlert!+1
② 記憶テストの成績
記憶力も、はっきりとした改善が見られました。PubMed+1
- 20分前に見た単語を思い出すテスト(遅延再生課題)で
→ スコアが平均5.8%アップ
→ 正解できた単語数が 約1.4語分増加
数字だけ見ると「たったそれだけ?」と思うかもしれません。
しかし、高齢者の記憶テストで数%の改善が出るのは、研究としてはかなり意味のある結果です。
③ 血圧への効果
さらに、
- 収縮期血圧(上の血圧):約5mmHg低下
- 脈圧:約4mmHg低下
といった、心血管系にとってうれしい変化も見られました。PubMed+2EurekAlert!+2
④ 体重はどうなった?
ピーナッツからのカロリーは1日約340kcalと決して少なくありません。
それでも、体重はほとんど増えなかったと報告されています。サイエンスダイレクト+1
研究チームは、参加者が自然と他の食事量を調整していた可能性を指摘しています。
4. なぜピーナッツが効くのか?考えられる理由
今回の研究では、「どの成分が主役か」を特定してはいません。
ただし、次のような栄養素の“チームプレー”で効果が出ていると考えられています。PubMed+2EurekAlert!+2
- L-アルギニン
- 一酸化窒素(NO)の材料になるアミノ酸
- NOは血管を広げ、血流を良くする働きがある
- ピーナッツの皮のポリフェノール
- 抗酸化作用を持ち、血管や脳を酸化ストレスから守る
- 皮つきローストを使ったのは、この「皮」に注目したため
- 不飽和脂肪酸(オレイン酸など)
- 心血管の健康を支える脂質として知られている
- 食物繊維・ミネラル類
- 血糖や脂質のコントロール、腸内環境の改善を通じて、
間接的に血管・脳に良い影響を与える可能性
- 血糖や脂質のコントロール、腸内環境の改善を通じて、
つまり、一つの「魔法成分」ではなく、
ピーナッツのさまざまな成分が組み合わさることで、
脳の血流と記憶力を支えている、と考えられます。
5. 日常生活での取り入れ方と注意点
「じゃあ、今日からピーナッツを山ほど食べればいいの?」
と言われると、さすがに話はそんなに単純ではありません。
研究結果を安全に、自分の生活に落とし込むポイントを整理します。
取り入れ方のヒント
- 目安量の参考:1日30〜60g程度
(研究では60gですが、体格や総摂取カロリーによって調整が必要) - 条件
- 無塩(食塩不使用)
- 皮つきロースト が理想的
- 食べ方の例
- 間食としてひと握り
- サラダやヨーグルトにトッピング
- 小分けにして、午前と午後に分けて食べる
必ず気をつけたいこと
- ピーナッツアレルギーがある人はNG
- ごく少量でも重いアレルギー反応を起こすことがあります。
- カロリーは高め
- 60gで約340kcal
- 他の食事量を少し減らす・お菓子をピーナッツに置き換えるなどの工夫が必要です。サイエンスダイレクト+1
- 生活習慣病・腎臓病などの持病がある人
- ナッツ類は、カリウムやリン、脂質も多めです。
- 主治医や栄養士と相談したうえで量を決めるほうが安全です。
- 塩分の多いピーナッツは別物
- 味付きスナック(塩・砂糖・衣付きなど)は
研究で使われた条件とは違います。 - **「無塩・皮つき」**という条件が非常に重要です。
- 味付きスナック(塩・砂糖・衣付きなど)は
6. 研究の限界と「うまくつき合う」視点
この研究はとても興味深い結果ですが、
そのまま「ピーナッツで認知症予防ができる」と言い切ることはできません。PubMed+2EurekAlert!+2
主な限界ポイント
- 参加者は31人と、まだ少人数
- 対象は健康な高齢者のみ
- すでに認知症のある人、他の病気をもつ人への効果は不明
- 期間は16週間
- もっと長い期間での効果や安全性は、今後の研究が必要
- 資金提供はピーナッツ関連団体(The Peanut Institute Foundation)
- データへの介入はなかったとされていますが、
利害関係の存在には注意して解釈する必要があるinc.nutfruit.org+1
- データへの介入はなかったとされていますが、
それでも、
- 試験デザイン(ランダム化・クロスオーバー)は強力
- 最新の脳画像技術(ASL-MRI)を使っている
- 血圧など、他の指標も一貫して改善
といった点から、
**「信頼に値する重要な一歩」**と言える研究です。
7. まとめ:今日からできる、小さな「脳ケア習慣」
今回の研究から見えてくるポイントを整理すると──
- 脳の血流低下は、加齢による物忘れや認知症のリスクに直結する
- 無塩・皮つきローストピーナッツを16週間食べ続けた高齢者では
- 脳全体の血流が約3.6%アップ
- 前頭葉・側頭葉の血流も増加
- 言葉の記憶テストの成績が約5.8%向上
- 血圧も少し下がった
- 効果の背景には、
- L-アルギニン
- ポリフェノール(特に皮)
- 不飽和脂肪酸
などの“チームプレー”があると考えられる
- ただし、アレルギー・カロリー・持病との関係など、
「量」と「個人差」への配慮は必須
大事なのは、
**「ピーナッツを食べればすべて解決」**と考えるのではなく、
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 良い睡眠
- 社会とのつながり
といった基本的な生活習慣の一つのピースとして、ピーナッツを上手に使う
という視点です。

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おわりに
「脳に良いことをしたい」と思うと、
つい高価なサプリや最新ガジェットに目が行きがちです。
でも、この研究が教えてくれるのは、
“少しの工夫で、ふだんの食卓に並ぶ身近な食品でも、脳をいたわることができる”
という、とても優しいメッセージです。
今日の間食のポテトチップスを、
無塩・皮つきピーナッツのひと握りに置き換えてみる。
そんな小さな一歩から、
「将来の自分の脳」を少しずつ守っていくことができるのかもしれません。


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