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ストーキング行為を脳科学で読み解く、そして終わらせるために

目次

はじめに:単なる「執着」ではない問題

ストーキングは、愛情の裏返しやしつこい求愛ではなく、重大な犯罪行為です。今回は、この複雑な問題を(1)脳科学の観点から理解し、(2)実際にどのように終わらせることができるのか、加害者と被害者の両方の視点から考えます。


(1)脳科学から見るストーキング行為

ストーキング行為は、「性格が悪い」という次元ではなく、脳の機能的な問題が関与している可能性が指摘されています。

「脳の司令塔」前頭前野の機能不全

脳の前頭前野は、衝動の抑制、理性的な判断、共感といった高度な機能を担う「司令塔」です。神経科学的研究では、ストーキングのような執拗で反社会的行動を繰り返す人々のなかには、この前頭前野(特に腹内側前頭前野)の活動が低下している傾向が確認されることがあります。

つまり、「やってはいけない」と理性でブレーキをかける力が、生理的に弱い状態にある可能性があります。

扁桃体と報酬系の暴走

同時に、恐怖や怒りの中枢である扁桃体が過活動になり、強い不安や怒りを生み出しているケースもあります。さらに、「どうしても手に入れたい」という執着は、報酬系(側坐核など) の異常な活性化と関連していると考えられます。

通常、報酬が得られない(=拒絶される)とこの活動は収まりますが、ストーキングを行う人は、拒絶されても活動が収まらず、逆に執着を強めてしまうのです。

重要な注意点:説明と正当化は別物

これらの脳科学的な説明は、ストーキング行為を正当化するものでは一切ありません。脳の特徴は行動を決定する運命ではなく、あくまで行動の責任は本人にあります。この理解は、「しつこい性格」を超えた、より深いレベルでの介入(治療や矯正)の必要性を教えてくれます。


(2)ストーキング行為を終わらせる方法

もしもあなたが被害に遭っているなら(被害者の視点)

  1. 最優先:孤立しない、我慢しない
    • 家族、友人、職場の同僚、大家さんや管理会社にすぐに相談し、状況を共有しましょう。周囲の目が最大の抑止力になります。
  2. 早期の警察への相談
    • 「大げさかも」とためらわず、少しでも不審を感じたら即時通報を。ストーカー規制法に基づく警告、禁止命令などを申請してもらうことができます。過去の軽微な違反の積み重ねが重大事件に発展するため、初期段階での司法の介入が極めて重要です。
  3. 環境を整える
    • 防犯ブザーを常備する。SNSの設定を見直し、位置情報や自宅が特定できる情報を公開しない。
    • ️帰宅時は注意を払う(玄関で荷物を探さない、エレベーターでは不審者と二人きりにならない等)。
  4. 護身用品は知識を持って
    • 催涙スプレーは所持は合法ですが、使用は「正当防衛」が成立する状況でのみ可能です。むやみに使うと暴行罪になるリスクがあります。
    • スタンガンは銃刀法により一般人の所持は禁止されています。違法所持は絶対にやめましょう。

もしも自身の行為を止められないなら(加害者視点)

これは非常に困難ですが、最も重要な道です。

  1. 自覚する:「これは愛情ではない、犯罪である」
    • 自分の行為が相手に与えている恐怖と苦痛を直視すること。それこそが共感の第一歩です。
  2. 専門家の助けを必ず借りる
    • これは一人で解決できる問題ではありません。精神科医心理カウンセラーに相談してください。認知行動療法などで、歪んだ認知パターンや衝動コントロールを治療します。
  3. 司法の命令を重く受け止める
    • 罰金や執行猶予などの判決は、「お仕置き」ではなく更生の機会です。保護観察官の指示に従い、更生プログラムに真摯に参加することが、自身の行動と人生を変えるきっかけになります。
  4. 環境を断つ
    • 相手のSNSをブロックし、一切の接触を絶つ。場合によっては引越しも視野に入れ、物理的・心理的距離を最大限に取る

まとめ

ストーキングは、脳の機能的な問題が背景にあり、それは個人の責任を免除するものではない、という複雑な問題です。

被害者は、一人で抱え込まず、早期に周囲と社会制度(警察)を頼ることが命を守ります。
加害者は、自身の行為が犯罪であることを認め、専門家の助けを借りて治療に臨む勇気が必要です。

社会全体でこの問題の深刻さを理解し、被害者を守り、加害者を更生させるシステムをより強固にしていくことが、悲劇を繰り返さないための唯一の道です。

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